スピーカーケーブルの末端処理方法 [AV FAQ]
Speaker Cableの末端処理については、これをしておけば正解。というのがないのが現実です。何故かというと、スピーカー端子が規格として厳密に規定されていないからです。
例えば、古い設計のアンプやスピーカーは、その時代のスピーカーケーブルが細かったこともあり、バネ留めタイプのプッシュ式のものや、細いケーブルを絡げて使うことを考えたネジ止めタイプでした。現在のものは、バナナプラグやYラグ、太いスピーカーケーブル等に対応していますが、Yラグは内径6mmと8mmのものが混在しています。(一部のものを除き、だいたい8㎜が多いようです)AVアンプだと、スピーカー端子数が多いことから、スピーカー端子の間隔が狭く、Yラグに対応していないものが殆どでしょう。
結局、スピーカーやアンプにあわせるしかないわけです。
複数の手段が選べる場合、どの方法が一番音質が良いか?これも難しい問題です。余分な素材が介在しない、導線をそのまま使うのがベストな様に思えますが、裸の銅線は経年変化で酸化しやすい事を考えると、定期的にスピーカーケーブルの芯線を剥きなおす処理が必要になり、長期的な安定使用には向きません。また、スピーカー端子のつくりによっては充分な圧着が出来ず、接触抵抗が増加する可能性もあります。
個人的には良質な「圧着タイプ」のYラグ(Y型端子)の使用を勧めます。正しく圧着された金属同士(スピーカーケーブルの導線とYラグ)は互いに金属原子同士が結合し、機械的にも強固な結合となり、接点の酸化の心配もありません。再利用できるねじ止めタイプのラグもありますが、高価なうえ、接点の酸化のリスクが増え、採用するメリットが少ないように思います。
Yラグの表面が経年変化で酸化した場合は、接点復活剤+ミクロンクロス系の眼鏡クリーナーで磨けば大丈夫なのでメンテナンスも比較的容易です。
私がスピーカーケーブルの自作に多用しているのは、AIRBOWのYラグです。電工用の一般的な端子を低温処理したもので、安価なY端子ですが、音質の劣化が少なく、充分使い物になります。幅6㎜と8㎜の2タイプがありますから、自分の装置に適したものを選択してください。(F5.5/8が内側の切れ目が8㎜,F5.5/6が6㎜)大は小を兼ねますが、端子がずれてショートの危険性もあるので、サイズは合わせた方が無難だと思います。
- 出版社/メーカー: 逸品館
- メディア:
Yラグの内側が、6㎜と8㎜の両側の幅で2段階になったものがあります。この端子だと、スピーカーやアンプを買い替えても、そのまま使用できて、長期的に有利でしょう。オヤイデの製品が作りが良い割に価格が手ごろでお勧めです。
圧着工具は、1000円程度の簡易型ではなく、かならず、てこの原理を利用したしっかりしたものを使ってください。圧着力が圧倒的に違います。(上記、オヤイデのラグは銅の厚みがあついので、簡易型では、圧着不可能でしょう)数千円で入手可能なものですから、オーディオファンなら、1個持っていても損は無いはずです。私はロブテックスを愛用しています。
Yラグ加工例について、写真で解説しましたので、リンク先を参照してください。
8SQ(平方mm)の端子まで対応(太めのスピーカーケーブルに多い3.5SQは5.5SQの端子で処理するように指定されています。)していますので、この工具で不足することはないでしょう。
一方、バナナプラグは機器との取り外しが簡便というメリットがあります。
複数のスピーカーを使い分ける場合などは非常に便利でしょう。また、ある時期の英国製品には、バナナプラグ専用のものが多かったですし、AVアンプのスピーカー端子は間隔が狭いので、バナナプラグの使用が便利です。
圧着のための複雑な構造をもったバナナ端子は、高額な割に必ずしも高音質とは限らないようです。ありあわせのつもりで使っていたオーディオテクニカのバナナ端子が、比較してみると、意外と高音質で使えるものでした。お勧めです。メガネ用等の小型のマイナスドライバーでスピーカーケーブルを2ヶ所でネジ止めします。
極太のスピーカーケーブルには対応していませんが、一般的な太さのケーブルで困ることはないでしょう。
このバナナ端子の良いところは、外側がプラスチック製のカバーで覆われているため、ショートの危険性が少ないことです。バナナ端子は端子間隔が狭いことが多いので、重要なポイントです。(金属むき出しのバナナ端子の設計者のセンスを疑います)
スピーカー端子がネジ止め式の古いスピーカーやアンプの場合は、カーオーディオ用で、幅の狭いYラグを見つけることが出来ると思います。だいたい4mm幅のものが一般的でしょう。
10AWG(=約5.5mm2)対応
audio-technica ケーブルターミネイタ [TL10-M4Y]
- 出版社/メーカー: オーディオテクニカ
- メディア: エレクトロニクス
14AWG(=約2.0㎜2)対応
audio-technica オーディオテクニカ TL14-M4Y ケーブルターミネータ(Y型圧着タイプ)(赤/黒各2個入)(14ゲージまでネジ径4mm)
- 出版社/メーカー: オーディオテクニカ
- メディア:
プッシュ型の端子(バネ留めの簡易的な端子)の場合は、良質な細いスピーカーケーブルや単線をスピーカーケーブルの末端に圧着スリープで接続する方法がお勧めです。圧着スリープ部分を絶縁することを忘れないで下さい。ショートの原因になります。機器側の端子を交換するのもひとつの手段ですが、個人的には、見かけが変わる、元に戻せない加工は無責任には勧められませんし、私の趣味の問題で言えば、美しくないと思っています。
スピーカーケーブルの端末処理用には、こういった市販品もあります。テクニカのAT683は細めのスピーカーケーブルに変換する圧着工具タイプのもの。AIRBOWのIラグは低温処理された棒状の端子です。
audio-technica AT683 ケーブルターミネータ
- 出版社/メーカー: オーディオテクニカ
- メディア: エレクトロニクス
ケーブルの端末処理には、カッター等ではなく専用のワイヤーストリッパーを使いましょう。作業性が向上しますし、間違って芯線を切ってしまうミスも少なくなります。私はVESSELのものを愛用しています。秋葉原の老舗、オーディオ専科の推奨品です。
ナノカーボン等のオイルに微小なカーボンを混ぜた接点改良剤は、酸化防止や機械的なぐらつき防止で、効果があります。量を塗りすぎないように。
正しいスピーカーケーブルの末端処理で、長く安心して使えるスピーカーケーブルを用意しましょう。
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半年ほど前、自作電源ケーブルやスピーカーケーブルの端末処理のため、圧着工具を秋葉原で購入しました。
ガード下の工具店は結構親身に相談にのってくれるため、5.5SQ以上に対応の圧着工具を全部実際に触らせて頂き、使用感を確認した結果、ロブテックス製を選びました。理由は、にぎりの部分が絞られているため、片手でしっかりとホールドし、握り込めるためです。自分の手は大きい(手を広げると親指と中指の先端の間がA4サイズの短辺より大きい)のですが、それでも別のメーカーの圧着工具は使いづらいと感じました。というわけで、ロブテックス製はお勧めです。
YASさんお勧めのメーカーのワイヤーストリッパーは老舗ということもあり、良く見かけますし、実際使ってみても良い感じです。一方、日本工具大手のH社の奴は、切れがいまいちな感じがします。私は、上記工具店から刃に定評があるメーカーだと教えて頂いたフジ矢株式会社製を購入しました。持ち手に特徴があり、ホールド感があり、刃も悪くないのでお勧めです。でも、マイナーなんですよね。
by tany (2007-12-16 09:57)
私がロブテックスを買ったのは、10年以上前で、当時は大阪日本橋の五階百貨店(平屋建てなのですが^^;)のあたりだったとおもいます。このタイプにしては値段がお手ごろなのが理由だったのですが、正解だったようですね。
ベッセルのワイヤーストリッパーは、秋葉原の老舗キット屋さんオーディオ専科のお勧めということもあり、同社の(今はディスコンになっている)6V6PPのアンプを作った時に購入しました。
by YAS (2007-12-16 13:24)