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QUAD ESL63のDIY修理 [AUDIO]

私はQUAD のESL63Proというスピーカーを長年使用しています。

このスピーカーは非常に音が良いのですが、内部の振動板は非常に薄い高分子系のフィルムで、過大入力やゴミの侵入によるスパークが発生し、フィルムに穴が空き、それが原因のノイズが発生します。ビー/ブーといったノイズがそれです。 

また、ESL63は1981年、63PROが1986年発売の製品で古く、内部で使用されている接着剤が経年変化して電極の固定が失われ、バタバタとノイズ以上の音が出るようになっているものが、殆どだと思います。(いま出ていなくても、メンテナンス指定なければ時間の問題です。)

修理は基本的にエレメントの交換となり、2台のスピーカーを完全に修理した場合の代理店修理は50万円以上掛かります。 

私は10年以上前からDIY修理を行なっています。(今だ修行中で、他人の修理のサポートをする余裕はありませんので、質問されても、修理方法の詳細に付いては、お答えできません。)

修理のためのパーツは、オーストラリアのER Audioさんで購入しています。

下記にQUAD ESLのエレメント(発音パーツ。ESL63 1台は2台のミッドハイ用のエレメントと2台のバス用のエレメントの、合計4枚のエレメントから構成されています。)の故障例を示します。

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放電が原因と思われる電極板の焦げ目とフィルムの破壊。焦げ目は洗浄し、ラッカー等で絶縁します。
 
 
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こういったフィルムの穴から放電が生じ、ブツブツ、ビーと言った、ノイズが発生します。フィルムにかかっている張力も落ちてしまうので、張り替えるしかありません。
 
 
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導電塗料の色からメーカー純正のパーツのようですが、導電塗料の塗り方が間違っています。4隅の固定用のネジからのリークを防ぐために、ネジ周辺を大きく避けるように塗料を塗るのが正しい塗り方です。
 
このエレメントが原因で、ノイズはないものの、高電圧のリークが発生し、能率が落ちていました。

 
 
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ジャージネットを取り外したESL63PRO。エレメントの保護フィルムが弛んでいるのが見えますが、これも音質面での悪影響があります、たるみが無いように、綺麗に張った状態にすると見違えたように音がクリアになります。(メーカー修理でここまでやってくれるかは判りません)
 
 
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パンチングメタルを取り外した(これも、結構大変!)後、マイナスドライバーを差し込んで、保護フィルムを貼っているフレームを取り外します。保護フィルムの4隅はガムテープで補強されていますが、ゴム系接着剤が固化してぼろぼろになり、内部にゴミが侵入しやすくなっているので、これも交換前提となります。
 
 
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エレメント同士の結合部
 
 
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ミッドハイ用のエレメント2枚。この構造と電気的なディレイ回路で球面波を実現します。
 
 
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電極を固定している接着剤が経年変化で劣化し、電極の固定が駄目になっている場合、症状が出ていない他のエレメントも呼称寸前と考えてください。エレメント4枚(ペアで8枚)の全修理が前提となります。ESL63の生産時期を考えると、ほぼすべての製品がエレメント全てのメンテナンスが前提の状況です。エレメント1個の修理前提で修理コストを軽く考えないほうが良いです。
 
エレメントを分解して、フィルムを除去し(たとえ、穴あきのない正常なフィルムでも!)古い接着剤カスを綺麗に取り除き、洗浄したあとで、電極を再接着する必要があります。かなり大変な作業で、手慣れた私でもエレメント1枚あたり1~2時間必要です。
 
 
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電極を接着中。
 
 
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フィルムにテンションを掛けて、接着剤で固定します。最も緊張する作業。適切なテンションを掛けるための冶具は、現在も改善のための検討中です。 上記の写真の方法は、一般的なESL型のスピーカーのDIY修理の為の治具ですが、ESL63のエレメント用に充分に強く、かつ均一なテンションを得るためには、最適な方法とは言いがたく、現在、私は別の方法を実験中です。
 
適切なテンションが掛けられていない場合、本来の音質が出ないばかりか、ノイズ発生の原因になります。私の過去の失敗例だと、修理直後は問題なくても2~3ヶ月経過した時点でノイズが出るようになることが多いようです。(非純正修理の業者に依頼する場合、修理後の保証期間について注意したほうが良いでしょう。)
 
 
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フィルムに導電塗料を塗る前の準備。
 
 

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再組立。
 
私はESL63 1台分を組立前のエレメントの動作確認用のテストベンチ専用に使用しています。これによって、作業が大きく捗るようになりました。
 
 
 
最初のDIY修理時は、エレメント1枚の穴あきノイズのみ。電極固定の接着剤も性能を維持していたので、フィルム1枚の張り替えのみで済みました。今思えば、最初の故障がシンプルなものだったことは非常に幸運でした。

その後、接着剤の経年変化による電極の再接着や保護フィルムの張り替えを実践していますが、最初の修理で、そこまでやる必要があったら、修理を完遂させることが出来なかったかもしれません。ESLの修理も、要修理箇所が増えることにより、以前より敷居が高くなっていると考えて間違いなさそうです。

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タグ:Quad ESL63
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YAS

以前、mixiで、見知らぬ人(私より年長で、50歳前後だったと記憶)から、

「格安で修理してくれませんか?時間はゆっくり待てます。」

というメッセージを受け取り、世間の広さに驚いたことがあります。

by YAS (2013-06-16 03:14) 

大根田 芳宏

読ませていただき大変参考になりました
私はESL-63を使用していますが低い音を入れたとき
バサバサという音がするので分解したところ保護フイルムを破いてしまい
交換する羽目になりました 教えていただきたいのですが
そもそも保護フイルムは必要なのか又ゴミの侵入防止のためだけならパンチングメタルの内側に貼ってはどうかフイルムの材質はどんなものが良いのか
わからないことばかりです どうかご教授お願いします

by 大根田 芳宏 (2015-01-14 10:08) 

YAS

メーカーの設計の意図・意味が理解できていないのであれば、メーカーがやった以外の方法で修理するのは避けるのが適切でしょう。

by YAS (2015-01-15 04:12) 

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