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TANNOYのコピーキャビネットの話 [AUDIO]

ビンテージタンノイの時代、輸送コストの高さから、空気を運んでいるようなスピーカーキャビネットは輸入されず、ユニットのみを輸入して箱は国内で作るというやりかたが流行っていました。所謂、国産箱です。(TANNOYに限らず、JBL等でもそうですね。Goodmansあたりは、英国にも純正箱そのものが殆どありませんでしたが)

実際のタンノイのオリジナルシステムを使ったことがある人なら判ると思いますが、古いタンノイのキャビは良く響きます。楽器的スピーカーといわれるのはそんなところにあるでしょう。よく見ると、箱の6面で別の素材を使い分けています。響きのコントロールをしていた証拠です。現在のタンノイの家具調シリーズは、 MDFやパーチクルボードなど使っていますので事情が変わってきます。

残念ながら、国産箱の多くは、見た目や精度は優秀に出来ていますが、素材もオリジナルとは異なり、楽器的響きに大きな差があります。音響的なノウハウの部分は、図面には書ききれないのです。吸音材もまったく違うものが使われています。結果、国産箱システムからは、五味康祐の文章を読むまでもなく、オリジナルとはまったく異なる音が出ます。 

国産箱メーカーの幾つかは家具屋メーカーとして一流だったところもあるようです。しかし、家具として一流メーカーでも、オーディオは素人ですから、音の良いキャビネットでは無かったようです。また、タンノイは、システムとセットにして売っていたスピーカーユニットと、 単体で売っていたスピーカーユニットは、ネットワーク等の仕様が異なっていたという話もあり、一層、国産箱のシステムは不利になります。

かつてのステレオサウンドの記事で、タンノイのコーネッタ(IIILZ をコーナータイプのフロントロードホーン風のキャビに入れたもの)の製作記事がありました。海外雑誌の広告でコーネッタという箱のことを知った読者が、コーナータイプの箱を想像したが、実際は異なり、その読者のイメージに合わせたコーネッタ。という箱を作るというもので、オーディオ評論家とダイヤトーンの工場が協力していました。

製作記事に詳細な図面が掲載されており、いくつかのキャビネットメーカーからライセンスの怪しいコピー品が出たこともある様です。しかし、フロントホーンで負荷をかけることを前提に作られていない111LZは、CORNETTAキャビと組み合わされることにより、エッジに致命的なダメージを受けてしまったものも少なくないようです。(ビンテージオーディオ修理のプロの方に聞いた話。もちろん私の英国オリジナル箱のキャビネットに入ったGoldの111LZはまったく問題ありません。)大きめのバスレフ箱で背圧が少ない状態でのフロントホーンが良くなかったかもしれません。これは、私の想像。そういえば、オートグラフの復刻版に使われたユニットもタフなPA用がベースになっていました。

コーネッタで検索してきたあなた、そんな紛い物には手を出さないほうが無難ですよ。“幻の”じゃなくて、そもそも存在しない“紛い物”なのですから。幻の、等と言わずに、TANNOYのユニットを使った日本の雑誌企画の勝手自作箱といえば、突然、欲しくなく成るでしょう?(笑

もちろん、音響的に意味の無い素人工作のスケールダウン版のキャビも同じです。ホーンロードの周波数帯域が(笑  タンノイ謹製のオートグラフミニだって、フロントロードなんてかけてないでしょう?

ネットで発見した、本物のTANNOY CORNETTAです。アメリカタンノイ製のレクタンギュラー型バックローデッドホーンキャビネットです。

Cornettak.jpg
 
Cornettae.jpg
 
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コーネッタについては1990年台後半だったか2000年前半くらい。当時MJに広告を出していた神奈川県の小さな業者が、コピー箱を出そうとして、Stereo Sound社からクレーム?が入って話が流れるなど、製作記事が出たあとも、定期的に話題に上がってきました。 

オリジナル箱の作成には、ダイヤトーンの工場が協力したので、ゴミ箱レベルではないと思いますが、コピー箱は、どの程度のものだったかは、私は判りません。 


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コメント 2

Only Tannoy

リアローディングをかけて大丈夫なエッジが、より負荷の軽いフロントロードをかけると痛むというのはどういう理屈なのだろうと思います。MR,MG搭載のオートグラフもエッジの仕様はIIILZと同じはず。「ビンテージオーディオ修理のプロの方」の話は信用できませんね。
国産箱も様々で、一概にオリジナルより劣るとは言えないと思います。ただし、外見だけ似せたものが多く、オリジナルより劣るものが「多数派」という主旨なら同意します。
中低域用フロントロードホーンの効果は、中高音用のそれと同様に、音量だけではなく、音の情報量も拡大される事だと思っています。オルソンが何と言おうと、その効果は誰の耳にも明らかで、意味が無いということはありません。個人的にはいまさら中低域用フロントロード付きのスピーカーが必要とは思っていませんが、趣味の世界ですからそれを愛好する方がいても否定する気はありません。
by Only Tannoy (2014-12-07 08:04) 

YAS

古い話なので、詳細忘れてしまいましたが、コーネッタ箱(と、そのコピー品)に入れられていたIIILZで状態がオカシイものが多いとう話を聞きました。

私は国産箱について、一様に劣るなどと書いておりませんし、このエントリーでオルソン氏の事書いたっけ?と、思いましたが、やはり書いて居ませんね。

私が書いてないことについてコメントされても、申し訳有りませんが、当方は、「コメントする先を間違えたのかな?」と、思う程度です。
by YAS (2014-12-07 18:25) 

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