ドイツの楕円型フルレンジスピーカー ~ お気に入りのスピーカー達 [AUDIO]
私のお気に入りのスピーカーの一つがドイツの楕円型フルレンジスピーカーです。
たとえば、このTELEFUNKEN RS-1。ドイツのイメージとはちょっと違うかわいらしいデザインで人気があります。
製造時期が長かったらしく、ロレンツのアルニコやDEWのフェライトなど、数種類のスピーカーユニットの入ったものが生産されています。ペアとりにはご用心。
非常に薄い合板を曲げて作った構造で、非常にたくみにキャビネットを鳴らして、音作りをしています。デザインはかわいらしいですが、大メーカーTELEFUNKENの実力を感じさせる逸品です。
もともとは、1950年代くらいの高級ラジオや電蓄に使われていたスピーカーで、後のステレオ時代になっても、同種のスピーカーが、長い間 使用されていました。
楕円型のコーン紙には、小口径ユニットの高域の伸びと、大口径ユニットの低域の両方のよさを持つという話もあれば、単に設置場所の問題だという意見もあります。どちらにせよ、最終的に出てくる音が好みであれば問題はありません。
主だった製造メーカーは、Telefunken, Isophon, Lorenz, Grundig, SABA, HECO, DEWあたりでしょう。私の知る範囲では、Siemensは楕円ユニットを作っていないようです。DEWはマグネットメーカーで多くの会社に製品をOEM提供していました。当時、これらのメーカーには複雑なOEM関係があったようで、例えば、テレフンケンの完成品スピーカーシステムにイソフォンやロレンツのスピーカーユニットが入っているということも珍しくありません。また、スピーカーの型番については、部品番号があるのでしょうが、製品に記入されていない場合がほとんどで、今となっては資料がなく名称がわからないものが殆どです。同一フレームに小型マグネット、大型マグネットなどのバリエーションも多々あります。大口径の高級品になると、コーン型のツィータと組み合わせた同軸も存在しました。
これら、ドイツの楕円スピーカーは、メーカーによる差はあるものの、全体として、非常に薄く軽いコーン紙と、あまり規模 の大きくない磁気回路が特徴です。同じ楕円でも英国のEMIの楕円型ウーファーとくらべると、設計思想の違いが良くわかります。また、ドイツは、戦略物資 でもあったコバルトが入手しにくかったことから、アルニコではなくフェライトマグネットの採用が早かったようです。したがって、フェライトよりアルニコの ほうが音が良いという、一種の神話は通用しないようです。
音質は、総じて解像度が高く、高域が伸びていて、音が活き活きとしていて反応が良く、声が良く通ります。低音は量感で出るというより、反応速度の速さで、低音感が感じられるという音になります。見た目は安っぽいスピーカー達ですが、音は安っぽくありません。
個人的には、Westrexのフルレンジに高いお金を払うよりも、これらのドイツ製のフルレンジに投資した方が、はるかに、幸せになれると思っています。
標準的な使い方は、密閉か布やフェルトで音響付加を加えたポートをつけた古典的バスレフが主です。前述のようにコーン紙が薄く磁気回路も小型なので、ホーンロードをかけるような使い方には向きません。
大きなラジオのキャビネットを廃棄したときに、中のスピーカーやアンプだけ抜き取ったのでしょうか?中古市場には、スピーカーユニットだけのものは多くて も、スピーカーシステムになっているものは非常に少ないのです。私が最初に入手したTelefunkenのスピーカーユニットも、売主によると、コンソー ルラジオから取り外したものだったそうです。
私が最初に入手したドイツのフルレンジスピーカーがこのテレフンケンです。これ以前にも、JBLのフルレンジD216を所有していましたが、この必要最小 限のつくりのドイツ製フルレンジスピーカーの音に驚いてから、私はビンテージオーディオに興味を持つことになりました。これを機会に、私は日本製のスピー カーユニットから距離をとるようになりました。(すべてを否定するわけではありませんが、ほぼ、比較対照にならない。)
一方、システムに入っているものを調べると、非常に薄い合板で出来たエンクロージャーで良い音を出しており、音作りの巧みさを感じます。スピーカーユニッ トは部品ですが、スピーカーシステムは製品(商品)です。自分でも自作をするのでよく判るのですが、部品と製品の間には、大きな価値の違いがあります。
ドイツでは非常に早い段階でスピーカーの3D再生(サテライトスピーカーとスーパーウーファーの組み合わせ)が実用化されていました。それ以前のモノラル 時代は、モノラル音声に広がりを付加するものとして、小型のフルレンジスピーカーが作られています。これらは小型で多くのものが、非常にかわいらしいデザ インで、コレクションとしても面白いものです。
イソフォンのIsonetta。紙製のエンクロージャーです。これは、モノラル時代ものらしく、メインスピーカーと音量をそろえるためのボリュームがついています。
非常にレアなRS-1のメタルメッシュグリルタイプ。
組み合わせるアンプについてですが、当時のドイツ製の電蓄は、6BQ5, 6BM8, 6GW8のような小型の真空管が使われている場合が多かったので、それらの球を使ったアンプとの相性が良好です。例えば、エレキットの一番安い6BM8の 小型アンプキットなども良いでしょう。
耐入力数Wのスピーカーなので、大音量は無理ですが、家庭で音楽を楽しむ範囲の音量は充分に出ます。
夜間など、小音量で音楽を楽しむには最適なスピーカーの一つだと思います。
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