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音響用素材としてのフィンランドバーチ合板 [AUDIO]

現在、スピーカーキャビネット自作用の材料としてよく使われているのは、

・ラワン合板
・シナ合板
・アピトン合板
・米松合板

・チップボード
・MDF : Medium Density Fiberboard
・集成材

等があると思います。

個人的な経験に基づく、感想を述べます。

ラワンは良質な楽器的響きを期待できないので、充分な補強をして鳴きを排除したキャビネットを作るのが必要でしょう。シナ合板も基本的には同様です。

シナ合板は、中身がラワンで、外観のために外側のみシナをはったものと、中身もシナのものがあります。中身もシナの共シナ合板は、柔らかい為、音も柔らかくなってしまうという話を聞いたことがありますが、私は使用経験がないので、実際のところは判りません。

また、ラワン合板は表面処理が悪いので、塗装時にとの粉処理や充分なサンディングの処理が必要です。木彫オイルや透明ニスなどで木目を活かした仕上げは難しいのではないかと思います。

アピトン合板、シナ・アピトン合板などもありますが、これは使ったことが無いのでコメントできません。友人宅で、シナ・アピトン合板製の長岡式モアの音を聴かせてもらったことがありますが、非常に良い音でした。音響素材として、優秀なのだろうと思います。重量級の素材ですね。

チップボード、MDFは、メーカー製のスピーカーボックスの材料としても、多用されているものですが、DIYショップなどで一般的に売られているものは、メーカーがスピーカーなどに使っているものと比べ、密度が低く、軽く、結果、強度も足りないものが多いようです。少なくとも、同じ店頭で同じ厚みのものを手に持って、重さが全然違った経験があります。メーカーがスピーカー製作に使っているグレードのものが安定して入手できれば面白いでしょう。

MDFに対して、HDF High Density Fiber board という素材もあるそうなので、興味がありますが、実際に見たことはありません。

米松合板は、1950~60年代くらいまでのアメリカ製ハイファイスピーカーで多用されたことから、音響的に優れたものとされています。個人的にも、この時代につくられた合板製のキャビネットは幾つか所有しており、音響的な魅力もあると思います。が、近年は、家具や楽器に使えるような良質な米松合板の入手が難しく、構造用の針葉樹合板で木質よりも樹脂の接着剤のほうが多いようなものしか入手できない場合が殆どです。少なくとも、私は家具や楽器に使えるような良質な米松合板の入手先を知りません。(秋葉原の某店の米松箱も、構造用合板を2枚重ね合わせて、表面にツキ板を貼ったものです。)良質な米松合板が入手できれば、Vintage Speaker用のキャビネットとしては、チャレンジしてみたいと思っています。節目などが多く、材料として均一ではないのが、音響的に良い理由の一因のようです。

集成材は合板とくらべると強度が劣りますが、外観が良いので、小型スピーカーの作成では何度か使用しています。一番入手しやすいのはパイン合板とよばれる松系の素材ですが、つめで押すと跡が残るほどで、スピーカー用には少々柔らかすぎるように思います。私は、楢、タモなどの固い素材を使いますが、これは、硬すぎて、手持ちの電動ドリルでは穴が開けられないほどで、DIY初心者には薦められません。ヤスリがけも電動ヤスリ必須です。さすが、武具に使われた木材です。

最近、流行しているのがフィンランドバーチ合板です。私の知る限り、1990年代から輸入されていました。当時から興味を持っていた為、業務オーディオ系の取り扱い業者にカットの見積もりを依頼したことがありますが、持込図面をカットしてもらうには、相当な加工費を要求され実際に使うことができませんでした。(NC工作機による加工なので、工賃が高いのは仕方ない部分もあります。)

最近は、長岡鉄男氏設計のスピーカー用のカットをする業者が増えていてフィンランドバーチ合板を扱っている業者もいますね。私のオリジナルカットの図面をお送りして、見積もり依頼をしたことがありますが、見積もり詳細がない上に、カット代が(はるかに複雑な長岡式スピーカーとくらべ)はるかに高額で、見積もりの不明瞭さと、単品注文のコスト高を思い知らされました。

ところが、最近、

米屋材木店
http://yoneyazaimokuten.com/

さんの存在を知り、カットの依頼をしたところ、非常に安価な加工賃で高精度のカットをしてくださることがわかりました。今後は、オーディオに限らず、DIYには出来るだけフィンランドバーチを使おうと思っています。

 

カット済みのフィンランドバーチ合板

これが、最初にカットしてもらったバーチ合板

フィンランドバーチ合板の音響的特長ですが、ラワンなどと比べると、明るく透明感のある響きが特徴です。この明るい響きは、高解像度感の演出にも使えるはずです。素材の響きを活かしたキャビネットを作っても、充分対応できると思います。ただ、米松合板などと異なり、素材が均一なので、特定の周波数に共振が生じない様、若干の補強などで音質を調節する必要があると思います。(米松合板が、その、素材の不均一さ故、特定周波数の共振が少ないというメリットがあります)

外観が非常に美しいので、上手に仕上げすれば、ツキ板を張って仕上げた市販品に負けない美観のものが出来るかもしれません。

とにかく、“オーディオ特別価格(笑)” ではない、適切な価格のフィンランドバーチ加工を行ってくれる材木屋さんと出会えたことがうれしい今日この頃なのです。

下記のページで、フィンランドバーチ合板とロシアンバーチ合板の音質を比較しているので、参考にしてください。

フィンランドバーチとロシアンバーチ JORDAN JX92 自作箱 製作編
フィンランドバーチとロシアンバーチ JORDAN JX92 自作箱 比較試聴編

現在、 米屋材木店さんではオーディオ関係の木材カットは受け付けていないそうです。


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コメント 2

miya

なるほど。木材も色々なんですね。
勉強になります。
D.Cube2もそういえばフィンランド・バーチ合板のようですね。
by miya (2009-04-19 12:10) 

YAS

そうですね。

工業製品としてスピーカーを大量生産する場合は、入手製や均一な品質という意味、環境対策(これも、言葉が独り歩きしている感がありますが)で、よほどの高級モデル以外は、MDFやパーチクルボードの使用が普通になるのでしょう。

自作の場合、私は市販品にないコダワリがないと意味が無いと思っています。プロの作品と同じ土俵で勝負しても意味が無いので。

ですから、フィンランドバーチのように、高いけど、見た目も音も良い素材は魅力があります。あとは、米松合板が欲しいですね^^;
by YAS (2009-04-19 14:19) 

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