QUAD ESL-63 の欠点と改善策。 [AUDIO]
コンデンサ型スピーカーは、非常に薄く軽量な高分子膜を静電気を利用して振動板を全面駆動します。
全面駆動することにより、基本的に振動板に強度は不要となるので、振動板を非常に薄く、軽量なものにできるのです。軽量な振動系により反応速度の早い音を出すことができるのですが、同時にいくつかの欠点も発生します。
周波数レンジ的に伸びていても、振動板の強度が不足しているので、強いアタック音などが出にくい。これは、ソフトドーム系のツィータと、金属などを使用したハードドーム系のツィータの音質傾向を比較しても想像できると思います。
低域の再生限界は、振動板の面積/振幅幅に比例しますが、振動板は電界を生成する電極に囲まれているため、振幅を大きくとることができません。また、振動板の大きさの現実的な限界もあるため、結果として多くの場合、コンデンサ型スピーカーは低域が不足気味との評価を受けることになります。以上より、音質的なメリットは大きいが、使いにくい点も数多くあるため、万人向けとは言い難いものです。
Mark Levinson氏はQUAD ESLの音質に惚れ込んでいたようで、初期のMark LevinsonのアンプはターゲットをESLにしていたようです。彼自身、ESLに同様の欠点を感じていたようで、ダブルスタックESLで耐入力の問題をクリアし、高域にDECCAのリボンツィータ、低域にHartlyのウーファーを加え、HQD(Hartly + QUAD + DECCAの意味)システムを構築していました。
一方、私は下記のように、ESL-63Proを中心にシステム化を行いました。
高域成分というよりアタックの輪郭の部分の音質をAIRBOW CLT-1により改善。高域の改善は聴感上低域にも効果があるというのは本当で、ウーファー導入以前でも、CLT-1による低域の再現性の向上は明らかでした。
低域の改善は相当に困難でした。ホームシアター用に購入したYAMAHAのYST-500が、AVの効果音用のウーファーとしては使えても、音楽を聴く為には、ESL63とまったく音が合わなかったからです。映画の低音は効果音として独立したものですが、音楽の場合は、高域から低域にいたるまで、一つのつながりを持ったものです。従って、ESLと反応速度の会わないバスレフのウーファーから、数テンポおくれてやってくる低音が気持ち悪いのです。
SA LOGICのウーファーは、懇意にしている逸品館の清原店長が発表当初から評価しており、イベントでもその効果を体験していたので、気になっていたが、サイズと価格の問題から躊躇していた。(初期のものは、100万円ちかくして、サイズも大きかったのです。)
Digi Cube2という比較的安価で、小型のスーパーウーファーが発売になり、友人宅でも好結果を得たというので、私も自宅視聴無しで、思い切って導入したのが、大成功でした。
ESL63の音質を全く損ねずに、低域を20Hzまでフラットに伸ばす事に成功しました。以前から、前述の清原氏主催のイベントで実感していたが、バイオリンソロなどの、一般に低域の入っていないと思われるようなソースにおいても、効果が顕著なのには、驚かされます。
楽器から低音がでていなくとも、ホールの共鳴、楽器の音のわずかなうねりが、超低音として再生されることにより、演奏の雰囲気、演奏者のこめたニュアンスの再現が全く変わってくるのです。
その後、GradientのSW63という専用サブウーファーを購入しました。30cmウーファー2発を平面バッフルで使う特殊なウーファーです。110HzクロスでESL63とマルチアンプ駆動するため、使い方は比較的難しいですが、ESLと質のあう低音が楽しめます。また、ESLの低域をカットできるため、システム全体として耐入力の改善と低域の改善の両方が可能になります。
Gradient SW63の再生周波数は40Hzまでなので、15~40HzはSALOGIC D.CUBE2を使っています。わずかな周波数帯域なのですが、この帯域の有無で音楽再生に大きく差が出るCDも少なくありません。
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